受付からの紹介

先日肩、首の痛みでお困りの初診の患者さんが受診されました。

とある心療内科さんからのご紹介ということでしたが、紹介状がありません。

おかしいなぁと思いながら話を聞いていると

なんと紹介してくれたのはドクターではなく、

受付の方だったことがわかりました。

その受付の方は当院の漢方で肩こりがすごく楽になったそうで

行ってみたら、と紹介されたとのことでした。

「そういうこともあるんだね」と後でスタッフと話をしました。

ちなみに当院では殆どの方が肩こりは楽になります。

漢方を飲み始めて整体やマッサージに行かなくなった

という方もたくさんいます。

もっとも、この患者さんの症状はある難病が原因なので

効果があるかどうかわかりません。

でもきっと良くしていけるのではないかと思っています。

中医も様々

先日東京である中国人の中医とお話しする機会がありました。

中医といってもその先生は推拿(すいな)が専門です。

推拿というのは中国式のマッサージ、指圧のようなもので

向こうの中医大学では通常漢方、鍼灸、推拿の3つの部門があり

推拿も正式な東洋医学の治療法として認められています。

その昔、神戸中医学研究会でも中国のトップレベルの推拿の先生を

招聘したことがあり、その時はたくさんの患者さんがよくなって評判だったそうです。

東京でも評判の先生なので一度治療を受けてみたいと思いましたが

特に痛いところがなかったので今回は断念しました。

その先生は色々本も出されていて、漢方のことを書いた本を1冊いただきました。

思わずお土産をいただいて恐縮しましたが、

同時にどんなことが書いてあるのかなとちょっとワクワクしました。

所用が終わって帰りの新幹線で読んだのですが、感想は・・・

うーん、やっぱり「餅は餅屋」ですかね。

正直なところ、失礼ながらこれなら自分が書いたほうがいいと思いました。

中医といっても漢方と鍼、推拿は基本別ですからね。

ちなみに私の師匠は漢方しかやりません。

ただそんな推拿専門の先生が私の師匠の父君の名前を知っていたのは嬉しかったです。

とにかく私の師匠の父君は名実ともに当時の中国を代表する名医でしたからね。

師匠もかつて「ある年齢以上の中医ならみんな父の名前を知っている」

といっていましたが、本当でした(笑)

私は師匠の父君は存じ上げませんが、師匠も臨床能力は本当に素晴らしいです。

そしては私はそんな師匠から教わることができて、

漢方医として、本当に恵まれていると思います。

これからも師匠から引き継いだものを発展させて

患者さんに貢献していきたいと思います。

魚の骨が喉に刺さった! 漢方でどうする?

最近ちょと印象の強かった症例を2つほど紹介したいと思います。

一例目は不眠や倦怠感などの症状がすっかり良くなって落ち着いていらっしゃるご婦人ですが

受診日の朝にかますのフライを食べたら骨が喉に引っかかって取れないとのお話がありました。

こういう相談ってなかなか受ける機会がないんですよね。

なのでちょっと忘れかけていましたが、喉に骨が刺さった時にいい生薬があるのです!

それは威霊仙という生薬で”通絡止痛”という働きがあり、通常はリウマチなどの関節痛に用いられます。

それ以外に”消魚骨”と言われ骨を軟らかくする作用があると言われます。

そこでその生薬を煎じて服用してもらうようにしました。

そうすると、ご本人曰く

「1日分を服用したらその日の夜に骨が喉の上の方に上がってきた。

それで手を突っ込んだら取れた」

とのことでした。

「骨が上がってきた」というのは医学的に理解しにくいのですが

骨が軟らかくなった結果、湾曲が伸びて上の方で触れる感じになったのかもしれません。

十数年漢方診療をしていますが、こういった目的で威霊仙を使ったのは初めてです。

個人的にも非常に貴重な経験ができました。


AGAで高額の治療をする前に

先日抜け毛がきになるとのことで受診された方がいました。

抜け毛や円形脱毛などで相談を受けることは珍しくないのですが

その多くは中年の女性です。

でもこの方は若い男性の方でそういう方が漢方相談に来られることは稀なのですが

ご家族の勧めもあって受診されました。

お話を聞くと当診療所に来る前にAGA専門のクリニックを受診したそうなのですが

年間で百万以上の費用がかかると言われ、その場でローンを組むように勧められたそうです。

しかも毛が生えて来る保証はないと・・・

仮に効果がなくてローンだけ残ったら悲しすぎますよね。

そういったクリニックの存在自体が私からするとちょっと怖いと思いました。

実は漢方でもAGAに効果はあります。

ミノキシジルやフィナステリドの西洋薬もありますが、

漢方薬でも仮に保険外のものも考慮すれば月1〜2万で

それに劣らない効果が期待できると考えています。

ちなみにこの方はまずは負担の少ない

保険診療での治療をお勧めし、同意していただき治療を開始しています。

”AGAの治療に高額な費用をかけるくらいなら

まずは漢方を試していただければ”と強く思いました。

Q&A:舌について

Q:熱いお茶を飲んだり、寒いところに出たりとか、 

  日常のちょっとした刺激で舌の色は赤くなったり白くなったりするのですか?

A:舌の色はちょっと熱いものを飲んだくらいではあまり変化しません。

  中医学では病態をまず虚実で分けますが、実の状態は主に苔に、

  虚の状態は主に舌自体に出ます。

  例えば舌の色が白いと体が冷えて陽虚、

  紅いと体が熱を持つ陰虚と判断ことが多いですが

  体が虚してくるのは通常はある程度時間がかかるので

  そんなにすぐに変化しません。

  逆に舌が赤くなっていれば少なくとも数ヶ月は

  体が熱っぽくなっていると考えられます。

  ちなみに体が熱を持っていると気分的に落ち着きにくくなってきます。

  イライラしたり、寝つきが悪かったり・・・

  そういったことを相手が言わなくても自然とわかってしまいます。

  また本当は体が冷えているのにそれに気づいていない人が時々います。

  そういった方も舌を見れば冷えていることに気づけます。

  舌が白い場合は血虚の場合もあるのですが、

  何れにしても積極的に温めていただくといいです。
 

今年の診療が終わりました

今年も早いもので今日が診療の最終日でした。

特に年末は忙しかったですが、おかげさまで今年もたくさんの患者さんに受診していただきました。

また漢方専門のクリニックという性質上、近隣というよりもむしろ遠方から

受診されている方が多く、わざわざお越しいただいていることを本当にありがたく感じています。

そしてたくさんの方から「調子が良くなった」というお言葉をいただき

喜びを感じながら仕事ができることを大変嬉しく思っています。

ただ個人的には今年は色々あり自分の生き方を深く見つめなおす良い機会になりました。

年明けからは気持ちも新たに頑張っていきたいと思います。

これをご覧のみなさま、ブログをご覧いただき今年一年ありがとうございました。

来年は皆様にとって良い一年になりますよう心から祈念いたします。


Q&A:生薬の四気、五味について教えてください。

現在、毎月医師、薬剤師向けの勉強会を東京と神戸で行っています。

初心者向けのものなのですが、本格的に漢方を勉強したい人のためのコースなので

毎回方剤やその中に含まれる生薬の話もしています。

葛根湯や四物湯などの方剤は料理でいうと

ホワイトソースやデミグラスソースなどに例えることができます。

これらの市販のものを使って短時間で料理することもできますが、

その中に含まれる材料のことを勉強すれば

より美味しい自分流のソースを作ることができます。

漢方でもより治療効果をあげようと思えば

最終的には生薬一つ一つについて熟知しなければなりません。

そのために重要なのが四気、五味です。

四気というのは体を温めたり冷やしたりする性質のことで

熱、温、涼、寒の4つがあります。

実際には寒熱どちらでもない”平”というのがあり5つに分類されます。

漢方薬は冷え性や更年期障害のほてりなどの治療によく用いられますが、

それは生薬には体を温めたり冷やしたりする性質が備わっているからなのです。

それから五味というのは生薬の味のことです。

酸、苦、辛、甘、鹹(かん、塩味のこと)の5つがあります。

(実際には他に淡、渋もありますがここでは省略します。)

ところで、生薬を勉強する上ではこれ以外に

個々の生薬の効能も覚える必要がありますが

保険で取り扱う生薬だけでも150種類くらいあるので大変です。

この効能を覚える上で大事なのが実はこの五味なのです。

五味は難しく考えることはありません。

まず自分で味わってみればいいのです。

そしてその味をしっかり記憶する。

味を記憶するのはそんなに難しくありませんよね。

例えば生姜も生薬ですが効能はともかく

辛味があることを忘れてしまう人はいないと思います。

そしてこの味が先述した四気や効能ともリンクしていることが多いのです。

例えば眠気があるときに辛味のあるガムを食べたりすると思いますが、

それは辛味のものは気血の巡りをよくする作用があって

脳の働きも賦活されるからです。

そして巡りが良くなると通常は体が温まります。

つまり四気でいうと熱か温のことが多いとわかります。

また五味と五臓の関係というのがあって味によって

どの臓腑に効きやすいのかがわかっています。

辛味は肺に効きます。

ですから生姜は温める作用があり肺に作用し、痰や咳の症状にいいのではないか

ということが推測されるのです。

実際に生姜は去痰作用もあり風邪にも使われます。

生姜の作用はこれだけではないのですが、五味を知ることによって

生薬としての生姜の大まかなイメージをつかむことができます。

このイメージをベースにして効能を覚えていくのが

生薬を理解する早道になると思います。

ういろうを買いに小田原へ

先日患者さんから小田原に”ういろう”なる漢方薬があって

昔からそれを飲むと胃の調子が良くなる、とお聞きしました。

知らなかったので早速ネットで調べてみると

なんと600年も前からあるらしい!

お菓子のういろうもここが発祥だそうです。

薬のういろうは小田原の本店に行かないと買えないそうで

早速東京の勉強会に行く途中に立ち寄ってみました。

建物がまず立派。ういろう本店

何と言ってもお城です(笑)

ちなみにここの近くに小田原城もあります。

中に入ってみるとお菓子のコーナーと

薬のコーナーが分かれていました。

短時間しかいませんでしたが、薬の方が良く売れていました。

薬のういろうは1人2個までしか買えないという制限があるのですが、

みなさん一番大きい5千円の箱を2つ買っていました。

私はお試して千円の一番小さいやつを一つ(笑)

印籠も売っていたので合わせて購入しました。

この薬のういろう(地元のタクシーの運転手はういろう丸と呼んでいました)

色んな成分が入っています。ういろう丸

桂皮、縮砂など安中散に近い成分も含まれて

いて胃に効くのもうなづけます。

面白いところでは畢撥(ひはつ)

が入っています。

畢撥は胡椒ととても良く似ていて別名長胡椒と言われるほどです。

香りや辛味もあり胃痛によく、また最近は血流改善に効果があると言われています。

それと阿仙が大量に含まれています。

この生薬は正露丸にも含まれていて、整腸、下痢止めの作用があります。

従って胃腸の症状全般に効いてくれるのがわかります。

ただそれ以外にも意外な生薬が含まれています。

例えば麝香や竜脳ですが、これらは専門的には開竅薬(かいきょうやく)と言われ

昔からいわゆる気付け薬の主要な成分です。

さらに薄荷や石膏、蓬砂もあり、これらは清熱、抗炎症作用があり

喉や目の炎症に有効です。

最初見たときになんでこんな訳のわからない組成なんだろう?

と思いましたが、印籠に入れてわかりました。

旅に出たときに風邪や胃腸炎、それから暑気あたりなどに

気をつけなければいけませんよね。

それを1剤でカバーするように作られているのだと思います。

もっとも外郎(ういろう)さんを小田原に呼んだのは北条早雲だそうですから

戦の時の常備薬として用意しておいたのかもしれませんね。

それぞれの症状に対する漢方薬ならもっと優れたものがたくさんありますが、

こういった薬が代々信頼されて600年も引き継がれてきている

というところに漢方医としてロマンを感じます。

せっかくなので私も胃が痛くなったらこれを飲んでみたいと思います。


最近の週刊誌の記事を読んで

最近週刊誌に漢方のことが立て続けに取り上げられています。

それについて個人的が見解を少し述べてみたいと思います。

まず週刊新潮で漢方の副作用のことが取り上げられていましたが、

これはかなり昔の話で、漢方医でこういった副作用の話を知らないものはいないと思います。

当然そういった副作用に注意しながら診療にあたっています。

ですから、「どうして今頃急に週刊誌に載ったのかな」というのが正直な感想で

何か意図的なものを感じます。

またこの記事ではツムラが批判の対象となっています。

保険適応のある漢方薬を取り扱うメーカーの中で

ツムラは巨人と言えるほどのシェアを占めています。

良くも悪くもツムラが漢方業界を引っ張って来たというのも事実だと思います。

個人的には正常な競争原理が働くには今のバランスは非常に悪いと考えているので

他のメーカーにも是非頑張ってほしいと思います。

それからサンデー毎日で反論記事が出ましたが

ここでは日本漢方と中医学との違いについて書かれています。

本来の漢方は個人に合わせて「さじ加減」したオーダーメードにするべきなのに

ツムラが作った手帳などをみて簡単に処方する医師が多い、という指摘です。

確かに本来は漢方はオーダーメードであり、それが大きな特徴の一つだと思います。

私自身も全ての患者さんにさじ加減していますし、

このさじ加減から「金のさじ」と名前をつけています。

しかし、さじ加減ができるようになるにはかなりの専門的な知識が必要となります。

それこそもう一度大学に行き直すぐらいの気持ちで勉強しないと

とても身につきません。

一方で現代は現代の医学は西洋医学をベースにしたエビデンスを重視するものであり

例えば機能性ディスペプシアに六君子湯が有効であるという臨床データが出れば

医師であれば漢方を処方するのに特別な資格は必要ないですから

専門的な知識がなくても処方できるわけです。

それで専門家ほどではないにせよ、一定の割合の患者さんには効果をあげられると思います。

効果が上がれば医師、患者ともに漢方薬の有効性を認識できます。

実際漢方を処方する医師はかなり増えている印象がありますから

漢方薬の普及という意味ではツムラはかなり貢献していると思います。

漢方に目覚めた医師をより本格的な中医のレベルに導くのは我々

中医学を専門とする医師の役目ではないかと最近思っています。

日本漢方を信奉する医師もいますし、それはそれで尊重します。

しかし、日本漢方にばかりこだわっていては携帯と同じように

日本だけガラパゴス化する可能性があります。

何より中医学の有用性を私自身認識しているので

中医学が日本でより普及していくように少しでも力になりたいと持っています。


本来ならそろそろ冬に向けて養生するといい季節ですが・・・

朝夕はだいぶ涼しくなってきました。

ただ今年は湿気が強くて昨日のように雨が降ると蒸し暑く感じます。

本来なら秋は乾燥の季節ですが

この湿気のせいでまだあまり乾燥していません。

変な天候ですね。

この時期は冷え性の人は冬に向けて温かいものを摂って

養生をしていくといい季節だと思います。

さらに湿気も取り除きたいときは発汗させるといいです。

発汗させる食材としては生姜やネギ、それから香辛料の類です。

これらをたっぷり入れたスープを飲んで一汗かくと

体が楽になると思います。

まだまだ暑いという人は冷たいものを摂って

エアコンの除湿をかけるといいと思います。

それから乾燥に対して良い食材は蜂蜜、山芋、梨

少し珍しいものでは豚足です。

少し乾燥してきたと思ったこれらのものを多めに摂るといいでしょう。

今日の患者さんで乾燥してきたという方がいて、

おかしいなと思ってよく話を聞くと

職場で23度!の冷房がかかっているとのことでした。

どのように養生するといいかは個人の体質や状況によって

ずいぶん変わってきます。

自分の状態を良く理解してこれからの季節に向けて

養生していただければと思います。











まだまだ暑いと感じる人は冷たいものを摂ったり、

エアコンで除湿をするといいと思います。






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