人参はだてに有名ではありません

先日ある患者さんから朝鮮人参.jpg

韓国旅行のお土産を頂いた

のですがなんと朝鮮人参でした。

立派な品です。

以前このブログでも書きましたが

今は野生の人参はほぼなくなって

市場に流れているのは栽培品

なのですが、その栽培がけっこう難しいのです。

直射日光がダメだったり温度管理が必要だったり

なおかつ生薬として利用されるためには

最低2年は栽培しなければなりません。

おそらく頂いたものは3−5年ものではないでしょうか。

手間と時間がかかるのでどうしても価格が高くなってしまいます。

でも・・・とても効き目があります。

高い生薬は敬遠されがちですが、人参は蒸して紅くなったものが

紅参として保険がききます。

これが保険で使えるのは有難いことだと思っていて

疲れている患者さんにはよく処方させていただいています。

某メーカーのものを使用していますが、

担当の人曰く紅参末の処方量は私の診療所が日本一だそうです。

紅参よりももっと使っている生薬は他にあるので意外な感じですが、

とにかくそうらしいです。

かくいう私も紅参を時々飲んでいます。

段々年を取ってきたので、長く元気で過ごせるための

アンチエイジング漢方を最近自分用に考えていますが

紅参は絶対に外せない生薬の一つです。

賀偉先生の講演

この前の祝日に私が今非常に興味を持っている鍼の先生に

神戸で講演をしていただきました。

デモンストレーションとして私の患者さん2名を実際に治療していただきました。

1人は五十肩の男性で、手が水平方向まで挙らず着替えをするのが辛い

とのことでしたが鍼を刺してもらうと即座に手がかなり挙るようになりました。

その後の話では着替えも苦痛なくできるようになったそうです。

もう1人は帯状疱疹後の神経痛の方でしたが

その方も施術後に症状が軽減していました。

やはり素晴らしいと思いました。

その評判を聞きつけて全国から患者が来るそうなのですが

難病の方もたくさん受診されるので中には奏功しないケースもあり

非常にプレッシャーを感じるとのことでした。

なかには

「最後の頼みの綱と思ってやってきた」

と言われることもあるそうで、どう治療したらいいのかと

2時間風呂に入りながらいろいろ考えるとおっしゃっていました。

技術もそうですが、診療に対する気持ちもとても大事だと思います。

その意味でもいい講演が聴けてとても楽しい時間を過ごすことができました。

私の師匠もそうですが、中国から本当に素晴らしいものを

日本に伝えようとしてくれているので、是非それを継承して

患者さんに還元していきたいと思います。



質問コーナー:収渋薬について

Q:収渋薬について教えて下さい

中薬学を読みましたが何となくしかわかりません。

他の章と分けてあるのは意味があると思います。

(症状の重い時に使うのかな・・・?)

A:収渋薬を分けてあるのはやはり意味があると思いますね。

個人的にはちょっと独特な位置づけかなと思います。

様々な症状を中医学的に見ますと、なかには「漏れている」あるいは

「抜けている」「脱している」と理解される症状があります。

たとえば尿が漏れる、出血する、髪が抜ける、汗がすごく出る、などです。

これらの症状は中医学的に弁証すると原因は様々だったりします。

尿漏れは冷えが影響していたり、出血は元気が不足しているのが原因だったりです。

その場合当然ながらこれらの原因の治療をしますが(本治)

速やかに症状を改善させるために収斂させて漏れるのを抑える収渋薬を

併せて用いることがよくあります。

つまり収渋薬は症状を抑える標治の薬として使われます。

収斂させるのは一般に酸味を持っている生薬が多いです。

また渋みがあるものも同じく収斂させる働きを持つことが多いです。

代表的には山茱萸、五味子です。

例えば八味丸に山茱萸が入っていますが

山茱萸は肝腎に働き補益肝腎、収斂固脱の働きがあると言われます。

八味丸は補腎の薬なので、腎を補う山茱萸は適していますが

それだけでなく収斂固脱の働きがあるおかげで

頻尿にも効果があると考えられます。

また小青竜湯には五味子が入っています。

鼻水は昔は脳漏と呼ばれていました。

骨や髄液を主っているのは中医学的には腎ですが、

腎が弱って髄液が鼻水として漏れ出てくるという考えがありました。

その漏れを止めるために五味子が入るとより鼻水が止まりやすくなります。

現代ではアレルギー性鼻炎など中医学的にみると

外邪と考えられることが多いですが

その場合にもやはり五味子がはいることで鼻水が止まりやすくなります。

またちょっと変わったところでは火神派の李可先生が創成した

破格球心湯という処方があります。

李可先生は3年前になくなりましたが、

急性心筋梗塞などに用いてよい効果を上げていたそうです。

この薬の主薬の一つが山茱萸でなんと1日60〜120g使用します。

瀕死の状態で全身から気が抜けかけている「気脱」の状態を

改善させるのがその目的で、合わせて竜骨、牡蠣も用います。

収渋薬はうまく使うと非常にいい効果を得ることができますので

実は個人的には使っていて楽しい生薬です。


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